30代の頃でしょうか、「自分より若い人にものを教えてもらいなさい」と言われたことがあります。誰に言われたのかも忘れたし、もしかしたら新聞や雑誌のコラムで目にした言葉かもしれません。それはずーっと私の心に刺さっていて、今までずっと意識して、あえて若い方にものを習う機会を作ってきました。そして50歳になった今、本当だ、これは大切なことだったんだ、と確信。
若い人の言うことを聞く。これ、本当に難しいです。まず、こんな言葉がついつい頭に浮かんじゃうよね。『ほら、これだから今時の若者は』とか『親に向かってなんてことを』とか『若造にわかられてたまるか』とか、どんどん出てくるな、こりゃこりゃ。まーね、自分たちだって頑張って生きてきたわけで、若い人に「それ、違いますよ」とか鼻で笑われたら、ついつい人生経験を盾に威張っちゃうよなあ。わかるよ。深くうなずく。うんうん。
それでもやっぱり、若い人の言葉ってタイムリーなんですよ。速さとか柔軟さとか、学ぶべきこと多いよね。コロナの時代になって思いましたね。過去の経験ってまったくといっていいほど役に立たなくなったな、と。私たち、中年以降の人間は、これからどうやって生きていけばいいのだろうと、絶望した気がしましたもん。
でも、私には強みがあったんですよ。若い人に習うことに慣れていた!わたくし、大人バレエを習っておりまして、今まで習ってきた先生方は自分より年下ばかり。バレエって難しくてヒーヒー言ってるんですけど、年下の先生たちはビシバシ厳しい。そうは言ってもこちらも若い先生を尊敬してますので、必死に食らいつくという関係性です。身体は動かないのでね、その辺は考慮していただきたいな、と甘えつつも、尊敬する年下先生に認めてもらいたいという、純粋な気持ちもあるわけ。
当社で売れ筋の商品のひとつでディスクグラインダがあります。バッテリを使うコードレスのものが人気ですが、コード式もまだまだ根強い人気です。マキタもハイコーキも在庫切れのないように注意しなければならない商品なんですよ。で、このディスクグラインダ、サイズがあります。100mm、125mm、150mm、180mmの4種類です。先端につける砥石の直径に合わせて、機械のサイズもちがう。
なんでこんなに種類が多いのか…。100mm用のディスクグラインダに直径125mmの砥石をくっつければいいじゃん!って思いますよね?思っちゃいますよね。わかるわかる。でもね、やっぱり意味があるんですよ。ディスクグラインダは砥石を回転させて切ったり研磨したりする機械です。ということは、砥石の直径が大きくなると回転数が遅くなるんです。100mm用のディスクグラインダは直径100mmの砥石が理想とする速度に保たれるようにできてるわけです。
だからね、小さな機械に大きな砥石をつけちゃダメなんですよ。負荷がかかりすぎて機械が壊れちゃうぞ。壊れるくらいならまだいいけれど、機械の限界速度を超えて、砥石が割れたりしたら…きゃああああ!事故です。怖すぎる。
これ、お客さんに何度も話してるんですけど、くっつけちゃうんですよね。で、機械を壊しちゃう。当社は修理もしてるので、何度も何度も同じことしてるいぶし銀プロの方もいます。ダメって言ってるでしょ!って話してるのに、「いやあ、180mmの砥石がつけられちゃうからさあ」と。てへへ、じゃないですよ!大けがしたらどうするの!と言っても聞く耳持たず。事故になってからでは遅いんだぞ。本気で心配してるのに。
こちらの伝え方もダメなところはたくさんあると思う。それはそう。私の商品知識では聞き入れがたいってのもあるよね。だけど、そういう人生の先輩たちって、ご本人より若い人とあんまりお話ししてないのかな、と思うこともたくさんあります。部下とか後輩とか、はたまた、営業さんとかではダメですよ。彼ら彼女らは、立場的に気を使ってくれてるからです。年上の人の話を楽しそうに聞いてくれるからです。説教ですら聞いてくれます。だけど、もうちょっとフラットな関係で、教えてもらう立場の方が年下だった時に、どのような態度を取れるかで、人間の大きさがわかっちゃいます。怖いですねー。
若い人の意見を聞けるようになるには訓練が必要なんですね。私も知らず知らずのうちに中年になって、周りからは立派な社会人みたいに見えちゃうお年頃になってしまいました。でもさ、見た目ほど立派でもなけりゃ、無知であることこの上ない。そういえば、親にもなっていたりして、立派な親でもなかったりもする。そんな時に、若い人の意見をいかに聞けるか、これが後半戦の人生を大きく左右する気がしませんか?
さあ、わたくし50歳。人生100年時代なら今がまさに折り返しでございます。さてさてこれから私はどんなおばあちゃんになっていくのだろう。いちおう夢というか目標みたいなものはありまして、いつもわちゃわちゃ忙しそうなミーハーなおばあちゃんになりたいんですよね。若い人のやってることは楽しそうで最新で、ウキウキしちゃう。だからね、「今時の若者はけしからん」なんて言わないようにするし、絶対に思ったりもしないからさ、ましてや説教なんてしないから、ちょびっとは仲間に入れてもらいたいです。きゃぴきゃぴしていたいのです。よろしく〜。