あなたの未来はしばれない

卒業シーズンですね。今も『卒業ソング』ってあるのでしょうか。娘の卒業式で吹奏楽部の在校生がレミオロメンの『3月9日』を演奏してくれてジーンとしましたが、その出来事もなんだかんだ5年以上前だなあ。ちなみに私の頃は斉藤由貴の『卒業』ですね。幼い感じなのに毅然として歌う姿と、卒業式で泣かない、という斬新な歌詞に新しい時代を感じたものです。みなさんの卒業の思い出ってなんですか?

わたし、卒業の思い出って特になくて、どちらかというと先の不安が大きくてそれどころではなかったんですよね。若い時って恥ずかしいくらい無知だったので、大人の言葉を間に受けてしまってたんですよ。小学生の時は「中学に行ったら大変だぞ」、中学の時は「高校はもっと大変だぞ」、大学の時は「社会人になったら甘えんな」と言われて、いつもいつも脅されているような気持ちでした。大人になるって大変だなあ、嫌だなあ、このままじゃダメなのかなあ、と心配しかなかった。

で、大人になって思う。50歳になったのではっきり言おう。大人って、おどされるほど大変でもないし、甘えることもできます。どちらかというと、大人になった方が選択肢が広がると思いますよ。会社勤めして、朝が苦手だなあと感じたら、自分の時間で働けるように会社を作ってしまってもいいし、人との距離感をとるのが上手い人は、人が多い職場を積極的に選べばよろしい。1人が好きなら1人で働ける仕事ができるような勉強をしてくださいな。職場は日本のみならず、海外だって行ってもいいんです。大人って自由なんですよ。全部自由ってわけではないけれど、子どもの時の不自由さは大人になるとかなり解消されるはず。

マキタさん、やりましたね。今度はレンジを発売しました。企画室、自由すぎませんか?このノリがうらやましいです。そうそう、マキタさんの紹介映像がシュールで面白い。リアゲートをパカっと開けると現れるマキタレンジ。作業服の職人さんがおもむろに取り出したのは…コンビニ弁当。そして、温める。普通のお昼ごはんの風景なのにキラキラしてて笑えるんですよ。

私、冷たいご飯って平気で食べちゃうんですけど、温かくないと絶対にイヤって人、かなりの人数いると思われます。みんな言わないだけで、本当はほかほかご飯しか勝たん!と、こだわっている方が日本中あふれてそう。我々は昔から『温かいお弁当を食べる』ってことに努力してきた国民性。駅弁を温める技術。手作り弁当を保温する商品の数々。どうにかして温めたいとこだわり抜いてきたではないか!マキタさんがレンジを作ろうっと、と考えたのは、歴史からみて当然の流れなのだろう。

給食はね、冷めるんですよ。だって、クラス中に配り終わるまでに時間かかるじゃないですか。中学や高校でお弁当だった方も多いですよね。子どものお弁当なんて作ってもらえるだけありがたいってなもんで、冷たいとか固いとか、文句なんて言えませんよ。文句なんて言おうものなら「はい、お母さんは一生作りません」と極端なこと言い出すに決まってるんだから。子どもは黙って食べましょう。

それでは大人になりました。レンジくらい持ち運んだっていいじゃないですか。マキタのレンジはバッテリがあればどこでも温められますよ。これぞ大人の自由です。くだらない?とんでもない、自由を勝ち取るのは大変なことなんです。大人が必死に考えて、あーだこーだ悩んで、お金もかけて商品化したんです。そして大人が大金払って購入する。温かいお弁当を食べる。これぞ大人。

大人が「社会はそんなに甘いもんじゃない」って言うじゃないですか。あれ言ってる人って、おそらく自分が耐えて頑張ってきた人生を否定されてたまるか!って感じなんだと思います。これ、私の個人的な意見です。偏見もかなり入ってます。でも、きっと図星です。ねえねえ、もういいじゃないですか。いろんな価値観があってもいいじゃないですか。だから大人のみなさん、子どもに対しておどかさないでください。大人って楽しいよ、レンジ持ち運ぶことができるんだよ、くらいなこともたまに言ってあげてください。夢を持った子どもが大人になって夢のある商品を作ってくれると、わたくしは信じております。

きゃぴきゃぴしていたい!

30代の頃でしょうか、「自分より若い人にものを教えてもらいなさい」と言われたことがあります。誰に言われたのかも忘れたし、もしかしたら新聞や雑誌のコラムで目にした言葉かもしれません。それはずーっと私の心に刺さっていて、今までずっと意識して、あえて若い方にものを習う機会を作ってきました。そして50歳になった今、本当だ、これは大切なことだったんだ、と確信。

若い人の言うことを聞く。これ、本当に難しいです。まず、こんな言葉がついつい頭に浮かんじゃうよね。『ほら、これだから今時の若者は』とか『親に向かってなんてことを』とか『若造にわかられてたまるか』とか、どんどん出てくるな、こりゃこりゃ。まーね、自分たちだって頑張って生きてきたわけで、若い人に「それ、違いますよ」とか鼻で笑われたら、ついつい人生経験を盾に威張っちゃうよなあ。わかるよ。深くうなずく。うんうん。

それでもやっぱり、若い人の言葉ってタイムリーなんですよ。速さとか柔軟さとか、学ぶべきこと多いよね。コロナの時代になって思いましたね。過去の経験ってまったくといっていいほど役に立たなくなったな、と。私たち、中年以降の人間は、これからどうやって生きていけばいいのだろうと、絶望した気がしましたもん。

でも、私には強みがあったんですよ。若い人に習うことに慣れていた!わたくし、大人バレエを習っておりまして、今まで習ってきた先生方は自分より年下ばかり。バレエって難しくてヒーヒー言ってるんですけど、年下の先生たちはビシバシ厳しい。そうは言ってもこちらも若い先生を尊敬してますので、必死に食らいつくという関係性です。身体は動かないのでね、その辺は考慮していただきたいな、と甘えつつも、尊敬する年下先生に認めてもらいたいという、純粋な気持ちもあるわけ。

当社で売れ筋の商品のひとつでディスクグラインダがあります。バッテリを使うコードレスのものが人気ですが、コード式もまだまだ根強い人気です。マキタもハイコーキも在庫切れのないように注意しなければならない商品なんですよ。で、このディスクグラインダ、サイズがあります。100mm、125mm、150mm、180mmの4種類です。先端につける砥石の直径に合わせて、機械のサイズもちがう。

なんでこんなに種類が多いのか…。100mm用のディスクグラインダに直径125mmの砥石をくっつければいいじゃん!って思いますよね?思っちゃいますよね。わかるわかる。でもね、やっぱり意味があるんですよ。ディスクグラインダは砥石を回転させて切ったり研磨したりする機械です。ということは、砥石の直径が大きくなると回転数が遅くなるんです。100mm用のディスクグラインダは直径100mmの砥石が理想とする速度に保たれるようにできてるわけです。

だからね、小さな機械に大きな砥石をつけちゃダメなんですよ。負荷がかかりすぎて機械が壊れちゃうぞ。壊れるくらいならまだいいけれど、機械の限界速度を超えて、砥石が割れたりしたら…きゃああああ!事故です。怖すぎる。

これ、お客さんに何度も話してるんですけど、くっつけちゃうんですよね。で、機械を壊しちゃう。当社は修理もしてるので、何度も何度も同じことしてるいぶし銀プロの方もいます。ダメって言ってるでしょ!って話してるのに、「いやあ、180mmの砥石がつけられちゃうからさあ」と。てへへ、じゃないですよ!大けがしたらどうするの!と言っても聞く耳持たず。事故になってからでは遅いんだぞ。本気で心配してるのに。

こちらの伝え方もダメなところはたくさんあると思う。それはそう。私の商品知識では聞き入れがたいってのもあるよね。だけど、そういう人生の先輩たちって、ご本人より若い人とあんまりお話ししてないのかな、と思うこともたくさんあります。部下とか後輩とか、はたまた、営業さんとかではダメですよ。彼ら彼女らは、立場的に気を使ってくれてるからです。年上の人の話を楽しそうに聞いてくれるからです。説教ですら聞いてくれます。だけど、もうちょっとフラットな関係で、教えてもらう立場の方が年下だった時に、どのような態度を取れるかで、人間の大きさがわかっちゃいます。怖いですねー。

若い人の意見を聞けるようになるには訓練が必要なんですね。私も知らず知らずのうちに中年になって、周りからは立派な社会人みたいに見えちゃうお年頃になってしまいました。でもさ、見た目ほど立派でもなけりゃ、無知であることこの上ない。そういえば、親にもなっていたりして、立派な親でもなかったりもする。そんな時に、若い人の意見をいかに聞けるか、これが後半戦の人生を大きく左右する気がしませんか?

さあ、わたくし50歳。人生100年時代なら今がまさに折り返しでございます。さてさてこれから私はどんなおばあちゃんになっていくのだろう。いちおう夢というか目標みたいなものはありまして、いつもわちゃわちゃ忙しそうなミーハーなおばあちゃんになりたいんですよね。若い人のやってることは楽しそうで最新で、ウキウキしちゃう。だからね、「今時の若者はけしからん」なんて言わないようにするし、絶対に思ったりもしないからさ、ましてや説教なんてしないから、ちょびっとは仲間に入れてもらいたいです。きゃぴきゃぴしていたいのです。よろしく〜。